第二回ホームヘルパー国賠訴訟裁判報告会概要

2020年3月30日

3月30日(月)に東京地方裁判所にて、二回目のホームヘルパー国賠訴訟裁判が行われた。

昨年11月1日に裁判を起こした原告側の藤原るかさんたち3名が出した訴状に対し、国側から答弁書が出され、それについて今回の裁判で原告側が反論した、というのが主な内容だ。

書面のやりとりなどで約10分ほどで終わった。コロナ渦で傍聴席数も制限される中での裁判だったが、それでも満席となり、一人傍聴できない人が出るほどだった。

その後、裁判所近くの日比谷図書文化館(東京都千代田区)の会議室で、今回の裁判報告会が原告らによって行われた。

その中で、原告の二人、藤原るかさんと伊藤みどりさんの共通の友人、(日本では)介護福祉士の二木泉(にきいずみ)さんが、カナダから「ビデオレター」の形で参加。 以下は、その時の内容をテープ起こし(一部読みやすく若干修正あり)したものだ。

今後日本で「首都封鎖」や「非常事態宣言」が出された場合の参考になるところが多々あると思うので、ぜひご覧ください。

【カナダからのビデオレター(zoomで会場とカナダを繋ぎ、カナダ在住の二木泉さんからコロナ渦で実質首都封鎖状態にある町の様子と介護職の人たちの置かれた状況を報告していただく】

藤原るかさん「時差13時間を超えてますんで、二木さ~ん!」

二木泉さん「二木泉(にき いずみ)と言います。日本では介護福祉士をしていて、伊藤(みどり)さんとは別のお仕事でずっと長く関わらせていただいておりました。

るかさんとも介護関係の読書会というのにお誘いいただいて、カナダに来る前の数年間一緒に勉強とか情報交換とかをさせていただいておりまして、今回このようにお声掛けいただきました。

カナダに5年半、もうすぐ6年ほどいてこちらに来てやっているんですけれども、カナダでも介護の仕事をしておりまして、老人ホームのレクリエーションの専門スタッフというのがこちらには配置されている。日系とか日本人の老人の方たちにレクリエーションをするっていう仕事をしています。本業は大学院の博士課程に今行っております。日本では主に認知症のデイサービスのパートをしておりまして、在宅ですとか、グループホームの方も手伝ったりなどしておりました。

今回カナダの状況をシェアして欲しいということだったので、コロナのこともありますので、そういったこともふまえて介護業界がどうなっているかっていうのをちょっとだけ報告させていただきたいと思います。

今コロナで大変なことになっておりまして、こちらは日本よりも早くですね、もう二週間ほど前から実質ロックダウンのような状態になっておりまして、人が外には出てはいけない、基本的には出てはいけないということになっています。

公共交通機関とか物流とかは動いているので、スーパーに出かけたりとか運動にちょっと出かけるといったことはいいんですけれども、生活に必要のないお店なんかは閉まってまして、例えばスタバなんかも早々に閉まって、デリバリーとドライブスルーだけになりましたし、レストランなんかもデリバリー以外のものはすべて閉まっています。

その中でも、老人ホームというのは閉まらないサービスなので、訪問介護も閉まらないサービスだということで頑張って仕事を続けています。

【日本との一番大きな違いは、コロナの状態で家にいて下さいということで、政府からの経済援助が早々に発表されたことですね】サービス業の人なんかはほんとに職場の出勤が次の日から禁止されてしまったので、そういった意味でも今発表されているのが、失業保険の素早い適用ですね。

ふだんは一週間ぐらいの、クビになったりだとか出勤停止になってから一週間以上のブラングがあるんですけれども、今は即日受付、ということと、フリーランスの方とか自営業の方なんかも、4月の1日から受け付けで10日後ぐらいには現金で支給されるっていう予定になっているんですけれども、それがですね、いちおう今の予定では月に2000ドルぐらいの支給があると言われています。

今だいたいカナダドルが1ドル80円ぐらいなので、16万円ぐらいですかね。は、支給になるというふうに言われています。

それが一番のコロナの状況の違いなんですけれども、実際には、【コロナの対応の日本との大きな違い、その2は、症状が軽い人は入院できないので、濃厚接触者で健康観察中の人も含めてかなりの人数が家に留まっています。家で2週間自己隔離が基本的に決められています】そこで何が起こるかっていうと、シングルマザーの方とか、高齢者の方でリスクが高い方なんかは、自分で買い物が行けなかったり、は、コロナにり患されている方はかなり人数がいらっしゃいますので、そういう方が買い物に行けなかったりで、そういう方が一人暮らしとかも多いので、そういった人たちに食糧を届けるボランティア活動なんかが立ち上がって、今この辺の地域で食糧を必要とする人がいるんですが行ける人いますか?みたいな感じで、お声がかかって行ける人が玄関先に届けに行く、で、直接は触れないで玄関先に置いておくということが行われています。完全にボランティアで行われています。

そしてこちらでは老人ホームは居宅扱いなので、老人ホームで発症したとしても、病院に入院するということないんですね。軽症の場合は特に。それは通常、看取りなんかもかなり多く老人ホームでやっていますし、インフルエンザなんかでも同じなんですけれども。

今回私の勤務する老人ホームでもコロナウイルスの疑いのあるスタッフが出まして、その人は、すぐ検査を受けられることがこちらではできるので、希望をすれば、で、症状があればですね。ですが、その間にですね、大変だったのが、周りのスタッフが出勤できないという状況ですね。っていうのが起こりました。

その方は幸いにも、ネガティブ、陰性だったのですぐに職場に戻って、みんな(職員)が戻ることができたのですけれども、万が一その人が陽性だった場合には、ほかのスタッフが14日間、自宅待機になってしまう、というのと、利用者さんが(コロナに)かかった時にもその方はずっと認知症があるにしても施設内に留まることになっているんですね。

ですので、スタッフはちょっと怯えております。

実際に配られるのは、今マスク一枚だけなので、一日一枚は配られていますけれども、その他熱がある人とかはお部屋に入る際には、防護服だったりとかを配られるんですが、なかなか…例えば認知症があってコロナに感染した人で、じゃあ、どうやって、個室が施設の半分程度はあるとは言っても、身体拘束できるわけでもありませんし、カギをかけるわけでもありませんから、そういったところでどういったふうに感染防止をしていくのかっていうのは、けっこうみんな戦々恐々としているところで。実際に高齢者施設でもう何名かかかっておられて、その中で二名が亡くなったという事例も、私が住んでいるのはオンタリオ州なのですが、オンタリオ州で発表されています。

で、こういった【リスクが高い職種であるということ、と看護師とか医師なんかも含めてですけれども、医療福祉に関わる従業員というのは、異常にリスクが高いということから世間の中で、今回やっとカナダでも知られるようになりました】 で、一応カナダでは日本と違って職種別の最低賃金というのが採用されておりますので、カナダの最低賃金は今、オンタリオ州で14ドルなんですね。なんですが、介護職の場合は、16.5ドルということで少しだけなんですが、ふつうの職種よりは最低賃金が高くなっています。
もう一つカナダの特徴的なものとしては、【組合が非常に強いです】 何かあったら組合に相談して下さい、とか、コロナのことでもオンラインのミィーティングがかなりありまして、例えば職場にこういうふうに言われたんだけれども、出勤停止していいかとか、休んでいいか、とか、こういった場合は失業保険、雇用保険が使えるかなどの相談がけっこう組合に寄せられているらしく、組合の方もかなり大きく活動しています。で、全国組織で、北米全体で組織しているヘルスケア業界の組合になっています。

そういったところが後ろ盾にあるというのが、まあ少しだけですけれどもスタッフにとっては安心なのかなあというふうに思っています。いちおうこちらからは以上なので、もしご質問とか何かありましたら、私のお答えできる範囲でお答えできればなと思いまます。

この裁判に関しまして非常に注目しておりまして、個人として介護に関わる者として非常にチャレンジングで、伊藤さんもるかさんも頑張ってくださってほんとに心から応援しています。遠くからですけれども、頑張って下さい」

藤原るかさんの質問 「夜の2時半。お子さんふたりいらっしゃいますけど、子どもたち、どんな様子ですか?」

二木さん「二週間前から学校が休みになっておりますけれども、オンラインで授業をやるっていうふうになっているので、まだちょっと移行期間で始まっていないのですけれども、来週には始まる予定で。今日ちょうど教育委員会であなたのお家にはどういった機材がありますか?っていうアンケートが来まして、パソコンだったりとかタブレットだったりとかインターネット環境がありますか?っていうのが一応来まして、先生によってだと思うんですけれども、zoomでやるのか何なのか、っていう感じで。今はリラックスした感じで家でゆっくりと過ごしています」

西村仁美

準備中