第7回口頭弁論報告

2021年10月01日

2021年9月21日裁判口頭弁論当日の様子を、事務局(フリーライター西村仁美さん)が書き留めてくれていますのでお読みください。

【ヘルパー裁判、伝家の宝刀「忌避(きひ)」を「抜く」】

事務局 西村 仁美

 昨日(9/21)のホームヘルパー国賠訴訟は、いい感じで荒れた(笑)。傍聴者数は、午後の開廷前で30名ほどで、傍聴席は満席。後ほど聞いた原告側の話では、法廷の外にも傍聴希望者たちがいたとかで。原告2名(藤原るかさん、伊藤みどりさん)を合わせ、その後の報告集会も含めれば、のべ40名超だったそうで。で、昨日の裁判だが、結局最終的には、原告側の代理人の一人、山本志都(しず)弁護士が、裁判長が原告3名の意見陳述、尋問も却下するというので、「忌避(きひ)宣言」をした。

 「忌避」というのは、裁判所が公正な手続きをやっていない、この裁判体、小田正二裁判長、松下絵美裁判官、町田翼裁判官、(今回は、裁判官3名の合議体)には、この裁判は任せらない!という時に、弁護士が使う最後の切り札、「伝家の宝刀」のようなものだとか。

 つまり今回の担当裁判官らをこの事件から全員外せ、ということだ。これからこの件で裁判があり、地裁、高裁、最高裁まで弁護士らは争う姿勢だ。ヘルパー裁判番外編?場外乱闘編?といった感じかな。

 ただ裁判手続き自体は、停止となるので、今後半年ほどはこの裁判、開かれなくなるそうだ。このヘルパー裁判は、原告の藤原さんや伊藤さん、佐藤さんは、しばらくの間、裁判に縛られなくなったので、法廷外での活動に力を入れていくことと思われる。それはそれで楽しみなわけで!(笑)

 いちおう昨日の裁判の内容、流れを書いておくと、裁判は、前回同様、被告の国は、原告側が出した一部の準備書面(国と事実関係を争うことになるはずの部分)についてなにも反応せず、「答える必要がない」という姿勢を貫き通した。さらには原告側が求める今後の証拠調べについても「必要なし」(既に証人申請を裁判所に出している)。

 裁判を提起した原告の藤原さん、伊藤さん、佐藤さん3名の意見陳述や、国がやらない、独自のホームヘルパーの労働実態調査に協力をした実践女子大の山根純佳さん、そして厚労省のお役人二名の証人申請を、原告側は裁判所に出していたが、国の意見をなぞらえるようにして、裁判所も昨日の裁判で不要としたのだった。

 それでも、山本弁護士が食い下がり、せめて原告3名の意見陳述をするよう求めるが、それも裁判長は却下。それに対し、原告の一人、伊藤みどりさんが挙手して意見しようとすると、また「代理人弁護士を通じて伝えて」と裁判長が言って来たため(※ というのも、前回の裁判で原告の藤原るかさんが挙手して裁判長に意見を言おうとした際、同じことを言っていた)、傍聴席から「そんなのおかしい。原告本人が言おうとしているのだから」といった声があがり(それも退廷を命じられそうだったが)、山本弁護士がなんとか裁判長をなだめ、山本弁護士からも改めて同じような話があり、それでようやく伊藤さんの発言が許された。

 伊藤さんの意見は、要約すると、介護報酬は、国が公定価格として決めていて、事業所が勝手に決められるわけじゃない。なのに国は関係ない、それは事業所の責任だ、というのはおかしい。証人も認めないなんて、これまでいくつも裁判を経験して来ているが、こんなの前代未聞。国はこちらが独自調査する前からこうした実態があるのを把握しておきながら知らぬ存ぜぬを決め込んで、同じ土俵に上がってこようともしない。裁判所は裁判所で、国に対し、こちら側が出した証拠の事実確認について認否するよう促すとか、裁判指揮権も発揮しようとしない。国が言った通りのことをそのまま同じように言っているいるだけ。裁判所は、こちらが提出した証拠にすべて本当に目を通しているのか?(※ 伊藤さん、違っていたら訂正してくださいね!全部メモれませんでしたので)といった主旨のことを怒りに任せて言っていた。

 すると傍聴席からは拍手が沸き起こるが、それについても裁判長は、気分を害した様子で、裁判指揮権があるのだと言いながら退廷をチラつかせる(※ こういう時だけ裁判指揮権を発揮するのだなあ)が、山本弁護士が再び「これは伊藤さんの意見に自然に心が動かされて現れている拍手であり、裁判を妨害するためにやっているわけではないので、大目にみていただければ」などと言って、裁判長をなだめ、いい感じで事を丸く収めていた。「これ以上こうしたことがあれば、警備を呼ぶ」などと裁判長はまだ息巻いていたけれども。

 実は、裁判所が裁判指揮権を十分発揮していないといった内容の原告側からの不服申し立ても少し前に裁判所に対し行っていた。それも、もしかしたら気に入らなかったのかもな、と個人的には思った。

 で、その後、原告らの意見陳述、尋問に対する裁判所としての判断を確認すると、「却下」ということだったので、それこそ条件反射的にさらりと山本弁護士は「忌避します」と宣言したのだった。
 もう閉廷後の帰りのエレベーターの中でのあちこちから漏れていた裁判長への非難の声といったらなかった。「裁判長だって、そのうち介護が必要になるのにね! なんであんなことを言うのか!!」といった声があったこともいちおう書き留めておく。
 みなさん、どうぞヘルパー裁判への応援よろしく!

準備中